カンバン方式は、もともとはトヨタ生産方式の中心であるジャストインタイム生産(必要なものを、必要な時に、必要な量だけ生産するシステム)を実現するために考案された生産管理方式です。トヨタでは1960年代から導入され、世界中のメーカーに大きな衝撃を与えた画期的な手法でした。
カンバン方式では「カンバン」と呼ばれる部品管理ボードを使って、生産工程での無駄を徹底的に省きます。カンバンは、商品名や品番、必要工数、必要数、保管場所や作業指示などが書かれた納品書・発注書・作業指図票が一つになったもので、これを使って生産ラインの各工程が連絡を取り合います。前工程で生産した部品を後工程に送る際、部品とともに生産した内容を書いたカンバンを送ることで、カンバンは納品書として機能します。後工程で受け取った部品を消費した際、消費した内容を書いたカンバンを前工程に戻すことで、カンバンはここでは発注書として機能します。これよって、後工程で消費した分の部品だけを前工程が生産することになり、在庫を抱える量を最低限に抑えられ、スムーズな生産を行なうことができます。
自動車のように数万の部品から構成される製品を、大量に、また効率的に生産していくためには、緻密な生産計画が必要です。在庫の過不足が一部品でも発生すると、計画に対し生産が遅れ、無駄なコストが発生することになってしまいます。この緻密な生産計画に対して、ジャストインタイム生産方式の部品供給をすることで、「ムリ、ムダ、ムラ」のない製造を行うことができます。そして、この概念を実現したのがカンバン方式となります。
このように、製品の生産ラインを効率化するために生まれたカンバン方式は、今では製造業の現場だけでなく、多くの業界に受け入れられ、システム開発におけるタスク管理 やプロジェクト管理 にも多く利用されています。
カンバン方式のプロジェクト管理・タスク管理では、それぞれのタスクをカンバンにみたてたカードで「見える化」して管理します。タスクの進行状況を「作業前」「作業中」「完了済み」などに区分して、縦に区切ってカードを配置し、「いつまでに」「誰が」「何を」行うのかを軸として詳細にタスクを分割していきます。
チーム全員のタスクを表示させることでプロジェクト全体の進行が確認出き、一方、個人のタスクのみを表示させることで、担当者レベルでの進捗状況を確認することも可能です。進捗状況が「見える化」されるため、チーム全員がそれぞれのタスクをはっきりと理解でき、誤解や勘違いを避けられます。また、プロジェクトの管理担当者にも業務進捗が明白になるのです。
カンバン方式は、「3M」といわれるプロジェクトの「ムリ」「ムダ」「ムラ」を削減します。
それぞれ具体的には、以下のような状態を指します。
ムリ:個人の抱える業務量が処理能力を超え、過度な負荷がかかっている状態
ムダ:チーム内で業務が重複して行われている状態、処理能力大きく下回る量の業務しか配分されず手が空いてしまっているメンバーがいる状態
ムラ:メンバーごとに業務量にばらつきがあり、ムリ・ムダになっている状態
カンバン方式で、チーム全体のタスクを一覧できるようになると、メンバーそれぞれが抱えているタスクの量が明確になり、作業の再配分・調整をしやすくなります。また、それぞれのタスクが「見える化」されるため、タスクの抜け漏れや重複が見えやすく、重要な工程が放置されるムラや、複数の人が同時に同じ作業を進めることでのムダが生まれるのを防ぐことができます。
ITサービスマネジメント(ITSM) の国際的なガイドラインであるITIL 4 では、プロジェクトを短い開発期間単位に分けて、柔軟にソフトウェア開発を進めることで、技術や社会の変化に対応する、アジャイル開発が重要視されています。
カンバン(タスクカード)によるタスクの管理は、タスクごとの優先度や担当者の変更が行いやすく、柔軟な対応が求められるアジャイル開発において運用しやすいため、多くのITSMSでカンバン方式ツールが採用され、プロジェクト管理、変更管理 、リリース管理 、インシデント管理 、問題管理 などで利用されています。
ソフトウェア開発において、システムの設計段階ではエンジニアのタスクが多い、というようにプロジェクトの特定の段階で、特定の社員に業務が偏ることは珍しくありません。
また多くの企業で、ITサービスのリリースや要求実現のためのプロジェクトが複数並行して進行しています。
複数のプロジェクトで、特定の社員に業務が偏るタイミングが重なってしまうと、どちらのプロジェクトの進行にも悪影響が出ます。カンバン方式によるタスク管理で、個人の抱えるタスク量を把握することで、それぞれのプロジェクトの進行を調整し、過度なタスクの集中を避けることができます。
また、多くのサービスデスクツールで用いられているチケットシステムによる問い合わせ管理は、カンバン方式と非常に相性が良いものです。
問い合わせ内容を入力したチケットを、そのままカンバン(タスクカード)としても利用できるので、対応業務の分配、チーム全体のタスク状況の管理をスムーズに行えます。
また、カンバン方式のツールを使うと、プロジェクトの情報一元管理もでき、タスクやそれに関する情報を入力する際のフォーマットを統一しやすいという利点もあります。これにより、ナリッジの蓄積ができ、情報を過去に戻って検索することも容易になり、レポーティングの時間短縮にもつながります。
カンバン方式で一覧できるのは、あくまで「ある時点」でのチームメンバーが抱えているタスクの状況であり、前後にどのようなタスクがあるかという時系列での進捗管理はできず、プロジェクトが今後どのように進行していくかということは確認することはできません。
カンバンをもとに、現状で手が空いているメンバーを、タスクを多く抱えているメンバーのヘルプにあてるということができるのがカンバン方式の利点ですが、この時、ヘルプに入ったメンバーは前工程の完了待ち状態で、一時的にタスクを抱えていないだけだったということが起こりえます。
このような状況に対応するために、カレンダーやガントチャートなどを併用することで、時間軸を含めて前後にあるタスクやタスクの業務量を確認できるようにしておきましょう。
カンバン方式では、タスクの数や進行状況を確認することはできますが、タスク個別の工数や重要度は判別できないので、全てのタスクが等価に見えてしまいます。
カンバンを1つしか抱えていないメンバーの手が空いているように見えても、実はそのタスクが多大な工数がかかる重大なものである可能性もあります。
カンバンの枚数だけでは、メンバーの状況をすべて正確に把握できるわけではないと理解したうえで、カンバンへのタグ付けやラベリング、また色分けをして工数や重要度を表示できるようにするといった工夫が必要です。また、業務負担の大きなタスクをより小さく分割したりするなど、タスクの必要工数をできるだけ統一するなどの工夫やルール設定も必要になります。
Freshserviceは、チームメンバー全員のタスクスケジュールと進捗状況をリアルタイムで更新します。
カンバン方式とガントチャート方式の双方に対応したタスク管理表で、メンバー全員のスケジュールを横断的に表示して共有。管理者はカンバン方式とガントチャートを切り替えながらプロジェクトの状況を確認し、担当者の変更等を容易に行うことができます。
期日に近づいているタスクの進捗状況が低い場合にはアラートを出すといった設定も可能です。
Freshserviceは、タスクに優先度や作業工数などを登録し管理画面に表示させることができます。
カンバンの数に加えてこれらの要素からも業務量を推し量ることができるため、「各タスクの負荷がわかりにくい」というカンバン方式特有の課題を解消し、チームメンバーへのバランスのよいタスク分配を実現します。
Freshserviceは、サービスデスクへのすべての問い合わせをチケットとして一元管理します。
登録したチケットは、そのままタスクとして登録できるので、問い合わせ対応に付随するタスクを新たにツールに登録し直す手間なく、カンバン方式で管理を行えます。
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