ITILの進化

インフラストラクチャライブラリ(ITIL)は、効率的なITサポートサービスを提供するための一連のベスト・プラクティスを備えたフレームワークとして定義されています。これにより、ビジネスのビジョン・戦略・成長に沿った費用対効果の高いITサービスマネジメント(ITSM)の提供が可能になり、サービスプロバイダーとエンドユーザー間の単一の窓口として機能することができます。ITSMは、プロセス・テクノロジー・人材を適切に組み合わせることで、企業が掲げる目標とビジョンを達成するためのサポートツールであり、ITILはITサービスの管理方法と提供方法を示してくれるものです。デジタル変革と技術イニシアチブは、ITILのベストプラクティスに基づいて実現されます。企業はITILを採用することで、明確に定義されたプロセスと適切な技術に基づいて、ITサービスの品質向上を図り、運用業務の効率化や最適化などを素早く実現することが可能になります。ITILを採用することにより、リソースが最適化され、既存プロセスの継続的な見直し、改善が図られ、企業や組織にとって適切なプラクティスのみを実行する効率の高いシステムを作り上げることができるのです。

ITILは1980年の発表以来、継続的にバージョン更新を行なっており、現在5冊の書籍が出版されています。ITILは、1980年代にイギリス政府の中央コンピュータ通信局(CCTA)によって最初に開発され、その後長年にわたり、業務の整合と効率性の向上を目的とし、数回の改訂を行ってきました。最初のITILの書籍は1989年に出版され、2000年にはV2が出版されました。V3は2007年の初回出版の後、改訂版が2011年に出版されています。ITILの最新版は今年中にリリースされる予定で、Devopsやアジャイル、リーンなどの方法論がカバーされる予定となっています。

ITIL認定

ITIL認定はAxelosが管理しており、特定のトレーニングコンテンツを含む5つのレベルが存在しています。ITIL認定は、ITILの主要重点分野に関する専門知識を習得し、エキスパートになるために活用できるものです。ITIL認定には5つのレベルがあり、初級レベルのITILファンデーションレベル、プラクティショナーレベル、インターメディエイトレベル、エキスパートレベル、上級のマスターレベルに分かれています。

ITILファンデーション

ITILファンデーション認定は、ITILサービスライフサイクルおよびサービス管理のベストプラクティスにおける主要なコンセプトとプロセスの基本的な理解を必要とする人全てを対象としています。目的は下記を理解し実行できるようにすることです。

この認定は、ITILプロセスを学びたい方であれば誰でも取得でき、資格基準はありません。ITILファンデーションは、他のレベルの試験を受けるための前提条件となります。これにより、ITプロフェッショナルとしてキャリアをスタートさせることに役立ちます。

ITIL入門

ITILフレームワークは、サービスライフサイクルの一部として5つのステージで構成されています。各ステージは、IT組織構造に沿った一連のプロセスまたは機能で構成されます。それぞれの企業はチームに適したプロセスを採用する必要があるということに基づき、ITILは柔軟な導入ができるようになっています。ITILサービスライフサイクルのステージは以下の通りです。

サービスストラテジ

企業がビジネス目標を設定し、お客様の要件と優先事項を満たすような戦略を設定できるよう支援します。

サービスデザイン

プロセスと機能の設計を含みます。サービス管理プロセス、技術、ITインフラストラクチャ、および製品の設計をカバーしています。

サービストランジション

企業における変更を導入しながら、サービスの現状維持を実現することに重点を置いています。これにより、進行中のサービスが中断されないように、確実なリスク管理ができます。

サービスオペレーション

サービスオペレーションにより、日々の業務タスクが途切れなくスムーズに行われ、インフラストラクチャおよびアプリケーション関連サービスのモニタリングができます。これにより、企業はお客様の要件と優先事項を満たすことができます。

継続的サービス改善

これは品質チェックの一環であり、プロセスの段階的かつ継続的な改善を目的としています。これは、サービスのライフサイクル全体において行われます。

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ITILの主要コンセプト

ITILフレームワークは、サービスライフサイクルの一部として5つのステージで構成されています。各ステージは、IT組織構造に沿った一連のプロセスまたは機能で構成されます。それぞれの企業はチームに適したプロセスを採用する必要があるということに基づき、ITILは柔軟な導入ができるようになっています。ITILサービスライフサイクルのステージは以下の通りです。

ITIL変更管理

企業では、日々新しいプロジェクトやアプリケーションが導入されます。この際、計画した活動を実行する前に、リスクと影響を分析することが大変重要です。リスクと影響に基づいて、すべての関係者を含む変更承認が計画されます。 変更管理では、より適切な追跡と監査のためにリクエストされた変更の全詳細が記録されます。変更管理は、組織がダウンタイムなしで新しい実装を効果的に導入する上で非常に重要です。実装後の見直しも、このプロセスの重要な一部です。

ITILインシデント管理

ビジネスユーザーは、スムーズな業務運営を期待しています。しかし実際のところ、現状の複雑なITインフラストラクチャコンポーネントとアプリケーションでこれを実現することは困難です。インシデント管理へ積極的に取り組むことにより、重要度の低いチケットと重大なインシデントの発生を避けることができます。チケットの分類と割り当てが自動化されて処理されるため、ITILに基づいたサービスデスクのエージェントは優先度の高いアクティビティに集中できます。 ITILインシデント管理 は構成管理データベース(CMDB) と緊密に連携しており、インシデントに関連する資産を紐付けすることができます。

ITIL問題管理

繰り返し発生する問題は、問題管理チームが根本原因を分析し、恒久的な解決策の提案、実行を進め、また、その恒久的な解決策が展開されるまでの一時的な回避策の提案も行います。前向きで積極的な問題管理は、大規模なシステム停止による潜在的な損害を防ぎ、サービスの可用性を確保するために、多くの企業で採用されています。インシデント管理と問題管理の違いを理解し、明確な役割と責任を割り当てることをお勧めします。

ITILとITSM

ITSMとITILは互いに相反するものではありません。ITサービスマネジメント(ITSM)は、ITサービスの効率的な管理方法を定義し、お客様に付加価値を提供します。企業によっては、自社がITSMを実行していることを認識していない場合もありますが、ITシステムとITインフラストラクチャが存在する場では、必ずITSMが実行されています。ITILは、ビジネスの変革およびIT戦略のために企業および個人が採用する、一連のベストプラクティスを備えたフレームワークであり、リソースを改善および最適化する方法を提案するものです。よって、ITILを採用することで、企業は効率的なITSMを達成できます。

「ITSMはIT管理の方法であり、ITILは効率的なITSMを実現できるようビジネスを導いてくれるツールなのです。」

ITIL導入チェックリスト

ITILは組織全体に実装するプロジェクト管理ではないので、すべてのケースに対応可能な単一のアプローチは存在しません。ビジネスニーズに応じてITILをカスタマイズすることで簡単に導入できるのです。

  • ITILの目標を理解する。何よりも大切なのは、解決しようとしている問題とITILの目標を理解することです。ビジネスの目標とITILの目標を合致させることが重要です。ITILが提供するメリットを理解し、お客様の優先事項に重点を置きましょう。ITILの価値をすべての部門責任者に伝え、ITILの認識が組織全体に行き渡るようにします。個人や企業がITILに関する専門知識を習得できるよう、ITIL認定を取得することをお勧めします。ITILでの管理は、IT投資に真の価値を付加することを目的とし、インフラストラクチャと運用(I&O)の状況をチェックすることができます。
  • 現在のプロセスの成熟度を分析する。ITILを実装する前に、現在のプロセスの成熟度を分析して、プロセスの改善領域を特定します。殆どの企業は何らかの形でITILを実行している可能性があるため、既存のプロセスを理解することは重要です。ビジネスの優先順位に基づいて関連するITILプロセスを採用し、ギャップを埋めます。プロセス成熟度評価は、望ましい結果を達成するために現実的である必要があります。
  • ITILプロセスとプロセスオーナーの定義。プロセスや技術の力より、人材の重要度が高くなります。プロセスオーナーの役割と責任を明確にすることが重要です。ITILの成功は、技術的なスキルに加えて、サービスデスクエージェントの態度とソフトスキルに大きく依存しています。ITILでは、さまざまな機能の間で多くのコラボレーションが必要となるため、サービスデスクエージェント採用前の、スタッフの人としてのスキル確認が重要となります。
  • 小さな規模で開始する。ITILでは、企業が26のプロセスすべてを実行する必要はありませんが、インシデント管理やナレッジ管理などの必要なプロセスから開始し、これらが成功した後に他のプロセスへ移行することをお勧めします。関係者すべて、また関連するプロセス担当の部署へ、ITILに関する情報を展開しましょう。
  • レビューと改善。継続的サービス改善(CSI)は運用の観点からも必須のものです。現在のプロセスの成熟度をレビューすることはプロセスのギャップを特定するのに役立ちます。CSIは、ITILサービスストラテジから、ITILサービスのライフサイクル全体にわたって行われます。ITILは常に進行中のプロジェクトであり、全体を通してレビューと改善が行われます。これは、ビジネス目標とITIL目標を一致させるのにも役立ちます。

 ITILのビジネスにおけるメリット

ITILは、ITサービスおよびビジネスにさまざまなメリットをもたらします。ITILにより、企業は他社のベストプラクティスやフレームワークから学び、自身のシステムを強化しながら、よりアジャイルになることが可能です。ITILは効率的なITサービスマネジメントの推進要因となるもので、具体的な利点は次の通りです

サービス品質の向上

サービスレベルの一貫性を保ち、サービス品質の向上によって効率性を向上させます。

コストの最適化

ビジネスおよびお客様の要件に基づいてリソースの優先順位を決定し、効率的に使用することでコストの最適化を実現できます。

顧客満足度の向上

ITILが顧客の要件を理解するにつれて、サービス品質が向上し、ひいては顧客満足度の向上につながります。

リスク管理の強化

ITILは、プロアクティブなITSMを支援し、重大なインシデントを回避し、リスクを管理します。最新のAI対応ITSMにより、過去の傾向に基づいて将来の事象を予測することができます。

ビジネス目標の調整

ユーザーが解決策を簡単に見つけられるよう、検索エンジンのナレッジ記事を最適化します。